翻訳連載ブログ
 「ロングマール翻訳書房」より、翻訳連載blog

手紙番号 173(詩番号0005)

 スー、――進むか留まるか――選択肢は一つしかないの――このごろ意見が食い違ってばかり、これがきっと最後になります。

 わたしがひとりぼっちになるから置いておけないなんて心配はしなくていいから。心に描いて愛していたものを捨て去ることなんかよくあるし――ときにはお墓に、ときには死よりもずっと悲惨な忘却に――そんなふうに心から血を流してばかりいるから、血が出ても気にならないし、それ以前の痛みにまた一つ痛みをつけ加えて、一日の終わりに口にするだけ――泡がはじけた!って。

 子どもでしかなかったころにこんな事態が起こったとしたらひどく悲しいだろうし、家族のそばでよちよち歩きしていたころならきっと泣いていたに違いないし、棺桶に収まったとしても、目は乾き、心は干涸らびた燃えかすになり、燃え尽きた方がましなくらいだと思う。

 スー、――わたしはこれまで生きてきました。

 永遠に変わらない天国の象徴をかつて夢見たことがあります。たとえそれを奪われても、わたしは一人で留まるつもりだし、あの最期の日が訪れても、あなたを愛するイエス・キリストも、わたしのことは知らないと言うでしょう――我が子を見捨てたりしないような、もっと暗い精霊がいるんです。

 わたしに分け与えてくれた人などほとんどいません。わたしの方から愛しても、その心酔のあまりに、みんなわたしからは距離を置くから――わたしは終わったことをつぶやくだけ。波は広大な青のなかに溶け、今日、人が沈んだことを、わたし以外は誰も知らない。二人でこれまで楽しく歩いて来たけれど――多分これがわたしたちの分岐点――歌いながら通り過ぎなさいスー、遠くの丘までわたしは歩き続けるから。

春のあいだは鳥がいて
わたしのために歌い――
春に呼ばれて訪れる。
やがて夏が近づき――
やがて薔薇が顔を見せると、
駒鳥は行ってしまった。

でも泣き言は言わない
なぜなら知っているから
飛んで行ってしまっても――
海の向こうで
新しいメロディを覚えて
戻って来てくれることを。

確かなのはよりしっかりした手
より正しい地をつかんでいるのは
わたしの両手――
そして今は離れているけれど、
わたしは疑う心に言い聞かせる
それはあなたの両手。

穏やかさの増す輝きのなかで、
黄金色の増す光のなかで
わたしは理解した
かすかな疑いと恐れと、
かすかな違和感が
ここからなくなったのを。

それからは泣き言は言わない、
なぜなら知っているから
わたしの鳥は飛び去っても
遠くの木の上で
輝くメロディを覚えて
戻って来ることを。

               E――。

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エミリー・ディキンソン 0005

わたしは春の鳥を飼っている
わたしのために歌い――
春に呼び寄せられる鳥を。
やがて夏が近づき――
やがて薔薇が顔を見せると、
駒鳥は行ってしまった。

それでも泣き言は言わない
なぜなら知っているから
飛んで行ってしまっても――
海の向こうで
新しいメロディを覚えて
戻って来てくれることを。

動かぬのは、より安心な手
より本当の陸地に捕われているのは
わたしの両手――
そして今は離れているけれど、
わたしは疑いの心に言い聞かせる
それはあたなの両手

穏やかさの増す輝きのなかで、
黄金色の増す光のなかで
わたしは理解した
かすかな疑いと恐れと、
かすかな違和感が
ここからなくなったのを。

それからは泣き言は言わない、
なぜなら知っているから
わたしの鳥は飛び去っても
遠くの木の上で
輝くメロディを覚えて
戻って来ることを。

エミリー・ディキンソン 0004

この大いなる海を
声も立てず渡るからには、
ほら、舵取りよ!
おまえは知っているのか
波も吠えず――
嵐も去った陸地を?

穏やかな西の海には
多くの船が足を休め――
碇を降ろしている――
あちらを目指せ、舵取りよ――
ほら陸が! 永遠が!
ようやくたどり着くのだ!

エミリー・ディキンソン 0002

どんなときでもうららかな
空もどこかにあるし、
たとえそこが暗闇でも、
光はどこかにある。
枯れた森など忘れて、オースティン、
寂しい野原など忘れて――
ここは、いつまでも緑のままの
小さな森。
ここは、霜の降りたことのない
明るい庭。
色褪せぬ花に囲まれて
蜜蜂の羽音が聞こえます。
どうか、お兄さん、
わたしの庭にいらしてください!

エミリー・ディキンソン 0067

成功を何よりも甘美だと考えるのは
決して成功することのない人たち。
神酒を味わうことのできるのは
痛いほどに必要としている人たち。

今ではもう、緋色に染まって
旗を奪った軍隊の誰一人として
勝利とは何かを
はっきりと定義することはできない

打ち負かされ――死に瀕して――
閉ざされた耳に
遠くから凱歌が
容赦なくはっきりと轟くときほどには!

エミリー・ディキンソン 1095

朝を夜に代える者にとりては、
夜こそ真夜中――なれ!

PROFILE

東 照《あずま・てる》(wilderたむ改め)
  • 名前:東 照《あずま・てる》(wilderたむ改め)
  • 本好きが高じて翻訳小説サイトを作る。
  • 翻訳が高じて仏和辞典Webサイトを作る。

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