目を覚ますと救急車の中にいた。リンダの顔がのぞき込んでいる。
「噛まれなかった?」震え声でたずねた。
「ええ。動けなくなっていた。病気のせいね。警察に電話したら、楽にしてくれた。そのあとであなたを見つけた」
「知らせようと思って……」ジャックはつぶやいた。
「休まなきゃ……眠って……話はあとでいいわ。今は生きていることを喜びましょう」
終わり
トーマ・ナルスジャックによるウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ贋作)「ブラッキー」の翻訳がこれにて完了いたしました。誤訳や齟齬を手直して翻訳書房にアップする準備をしつつ、次回は久々にコッパードを訳す予定です。