しばらくしてから目が覚めた――だいぶ経っているみたいだ――すっかり気分はよくなっていた。自分がどこにいるのか思い出せない。真っ暗で見慣れない場所だ。だがすぐそばで大騒ぎしていた――隣の部屋の蓄音機、コーラス、ダンス。女の声もする。この部屋にいてはいけなかったことをようやく思い出した。これでは犯罪じゃないか。泥棒か何かと間違われるかもしれない! ベッドから滑り降りて暗い中を手探りして帽子を探し、暑くなってきたのでコートのボタンを外すと、震えながらドアのそばに立ち、途方もない騒ぎに聞き耳を立てて待った。あそこに行くのは馬鹿げている! どうやって逃げればいい――いったいどうやって逃げればいいんだろう? 蓄音機が止まった。声がはっきり聞こえるようになった。静かに恐怖が忍び寄る。恐ろしいことに、そのうち誰かがここにやって来て、泥棒のようにこそこそしているのを見つけるだろう――逃げなきゃ、逃げなきゃ、絶対に逃げなきゃ。でもどうやって?
また歌が始まった。男たちが「ルル! ルル!」と囃し立てている。女の声がチャーリーなりジョージなりに答えているのだろう。そのとき部屋のドアが大きくノックされた。中の騒ぎがすぐにやんだ。深閑。ささやき声も聞こえるほどだった。室内の人たちは驚いていた。不安そうに見つめ合っているのがわかるほどだった。女が驚いたように甲高い笑い声をあげた。「しーっ!」まわりが鎮めた。ふたたび大きなノックがはっきりと聞こえた。震える心臓が気絶しそうなほど跳ね上がる。あの人たちはどうしてドアを開けないのだろう?――開けろ! 開けるんだ! 部屋を歩き回る音がして、三度目にノックが繰り返されたとき鍵が開けられたのがわかった。