ライナがためらいがちに戸口に立っていた。
「上に行かない?」
わたしに話しかけているのだと気づいて、あたふたと部屋を横切った。伯母たちはおかしな儀式を行っていた。伯父のところに歩いていくと、顔を上げて立ったまま、「おやすみ、チャーリー」と言った。伯父はちょっとのあいだだけそのままでいたけれど、やがて下を向き額にキスをした。
「おやすみ、おまえ《ディア》」
伯母のことを本当に|愛しい《ディア》と思っているのか、それともこれもゲームで心の中ではひそかに高笑いをしているのか、わからなかった。
ところがライナは何食わぬ顔でこちらに戻ってきたので、わたしたちは伯父をその場に残して三階に上がった。円形の階段(この階の壁龕には彫像があった)を上っていると、サンドイッチと魔法瓶の乗った盆を手に、エファンズが下からやって来た。「部屋に入って」とライナに言われ、家の正面側に向きを変えたところで、エファンズは盆を預けて「失礼いたします」と言い階上にさがって行った。
「エレンには来なくてもいいと言っておいたの。もう眠ってるだろうから」
十二時四十分だった。