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 「ロングマール翻訳書房」より、翻訳連載blog

『ジョゼフ・バルサモ』24-2

「手紙、書状、費用の手配はあたしがやります、任せておいて。心おきなくルーヴシエンヌにいらして下さい。今日からは、王宮が一つ増えるんです」

「断る方法はあるかな、サルチーヌ?」

「あるとは思いますが、誰も知らぬでしょう」

「断り方が見つかるとしたら、見つけるのはサルチーヌ殿だろうね。間違いない」

「どうお思いになります、伯爵夫人?」警視総監は身震いした。

「それが陛下、三か月前にサルチーヌ殿にお願いしたことがありましたけど、無駄に終わりましたの」

「何を頼んだのだね?」

「サルチーヌ殿はご存じですわ」

「私が? 私は決して……」

「仕事上のことかね?」

「ご自身と警察の仕事に関することです」

「伯爵夫人、本当に何のことやらさっぱりです」

「何を頼んだんだね?」

「魔術師を見つけるように、と」

 サルチーヌがほっと息をついた。

「火あぶりにするのかね? それは熱い。冬までお待ちなさい」

「違いますわ。金の杖を褒美に取らせようと思って」

「その魔術師は悪い予言をはずしてくれたのかね?」

「まるで逆。良い予言が当たったんです」

「一言違わず?」

「ほぼ正確に」

「聞かせて下さい」ルイ十五世は椅子に凭れた。果たして面白いのやらつまらないのやらわからぬが、一つ賭けてみようという口調である。

「喜んで。でも陛下、褒美の半分を持っていただかないと」

「必要とあらば、すべてを」

「それでこそ国王のお言葉ですわ」

「さあ聞きましょう」

「では始めましょう。ある時のこと……」

「お伽噺のような始まり方ですね」

「仰る通りです」

「それはいい! 余は魔法使いが大好きでね」

「さすが魔法の杖をお持ちの方のお言葉ね。ある時のこと、貧しい娘がおりました。小姓もなく、馬車もなく、黒人もなく、鸚哥もなく、尾巻猿もありませんでした」

「そして王も」

「まあ陛下!」

「その娘はどうなったんです?」

「歩いていました」

「何ですって、歩いていた?」

「ええ。パリの通りを、庶民のように歩いていました。ただ、随分と急ぎ足でしたけど。だって可愛いと評判でしたし、だから絡まれるのが嫌だったんです」

「その娘はルクレツィアというわけですね?」

「陛下はご存じでしょう。何年も前……ローマ建国がいつなのか知らないけど、それっきりそんな人いやしません」

「これは一本取られた! 学者になったらいかがです?」

「まさか。学者だったらとにかく何か適当な年数を口にしてますわ」

「ごもっとも」

「その娘は、チュイルリーを歩いて、歩いて、歩いていました。その時突然、尾けられていることに気づいたんです」

「その娘は立ち止まったんですね?」

「まあ陛下! ご婦人たちのおしゃべりに毒されていらっしゃるのね。陛下のお側にいるのがどんな方たちなのかすぐにわかってしまいますわ。侯爵夫人や公爵夫人に……」

「王女たち、ですね?」

「陛下のお言葉に反論は出来ませんわ。でも何より怖かったのは、突然靄が出て来たことです。あっという間に何も見えなくなってしましました」

「サルチーヌ、どうやって靄が出るのかわかるかね?」

 急に声をかけられて、警視総監はびくりとした。

「存じません、陛下」

「余もそうだ。どうか続きを、伯爵夫人」

「その娘は一目散に逃げ出して、柵を越えました。そこは陛下のお名前を冠してらっしゃる広場でした。うまく撒いたと思ったのに、いきなり目の前に男が現れて、その娘は叫びをあげました」

「醜かったのですか?」

「いいえ、それどころか、二十七、八の美青年でした。日に焼けていて、目は大きく、よく響く声をしていました」

「なのに怖がった。随分と怖がりなのですね!」

「その人を見てそんなに怖がったわけじゃないんです。でも状況が恐ろしかったんですもの。靄のせいで、悪いことをされそうになっても、助けは期待出来なかったでしょうから。だから手を合わせたんです。

『お願い、やめて下さい』

 男は感じのいい笑みを浮かべて首を振りました。

『何もするつもりはありませんよ』

『じゃあ望みは何?』

『約束をしてくれませんか』

『どんな約束?』

『お願いにあがった時には真っ先にお引き立て下さい。あなたが……』

『あたしが?』と娘は不思議そうにたずねました。

『あなたが女王になった時』」

「それで娘はどうしたのです?」

「何の実害もないと思ったので、約束しました」

「その魔術師は?」

「消えてしまいました」

「それでサルチーヌ殿は見つけるのを拒んでいるのですか? それはいけない」

「陛下、拒んではおりません。見つからないのです」

「あら、総監殿! それは警察の辞書にあってはならない言葉じゃありませんこと?」

「目下捜索中でございます」

「型通りの言葉ね」

「いいえ、真実でございます。しかしあまりに情報が少なすぎるのです」

「何ですって! 若くて、美男で、日焼けして、黒髪で、立派な目をして、声がいいというのに」

「随分な熱の入れようだ! サルチーヌ、その男を見つけてはなりませんよ」

「陛下は誤解なさってますわ。あたし、尋きたいことが一つあるんです」

「ご自身のことですか?」

「そうです」

「なるほど! だがこのうえ何をたずねたいと? 予言は当たったではありませんか」

「そうお思いですか?」

「違いますか。あなたは女王だ」

「似たようなものですけれど」

「ではこれ以上は教わることなどない」

「ええ。でもその女王がいつ正式に謁見を許されるのかを教えてもらえます。夜の政治がすべてではありませんわ、陛下。昼の政治だって大事じゃありませんこと?」

「魔術師の問題ではありませんよ」おかしな話になって来たことに気づき、ルイ十五世は口の端を歪めた。

「では誰の問題ですの?」

「あなたです」

「あたし?」

「ええそうです。代母を見つけて下さい」

「宮廷の淑女様たちの中から? そんなの無理だってことはおわかりでしょう。あの人たちはみんなショワズールやプラランの味方なんですから」

「おやおや、どちらの話もしないように決めていたと思いましたがね」

「そんな約束はしてませんわ」

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『ジョゼフ・バルサモ』24-1 「ルイ十五世」 アレクサンドル・デュマ

第二十四章 ルイ十五世

 罷り出でたルイ十五世は、顔を高く上げ、足をぴんと伸ばし、目を輝かせ、口唇には微笑みを浮かべていた。

通りしなに見たところ、開いた扉の向こうでは、廷臣たちが頭を垂れて二つの列をなしていた。国王が現れたことで、権力者二人をまとめてかき口説く好機が訪れたのだから、お目通りを望む気持もふくらもうというものだ。

 扉が閉まった。誰も入って来ぬよう王が合図したため、伯爵夫人とサルチーヌの三人だけとなった。

 小間使いと黒人の少年は別だ。二人とも数には入らない。

「おはよう、伯爵夫人」王がデュ・バリー夫人の手に口づけをした。「ありがたいことに、今朝は涼しいね!……おはよう、サルチーヌ。ここで仕事かね? 大変な数の書類だな! 何処かへやってしまいなさい! おや、素敵な泉ですね!」

 飽きっぽく気まぐれなルイ十五世は、昨夜まではなかった中国風の置物が寝室の隅にあるのに目を留めた。

「ご覧の通り中国の泉ですわ。後ろにある蛇口をひねると水が出て、磁器の鳥が歌い、玻璃の魚が泳ぎますの。それに仏塔の扉が開くと、役人がぞろぞろ出てくるんです」

「これはいい」

 その時、黒人の少年がやって来た。この時代には些か似合わぬ風変わりな服装は、オロスマーヌ【※ヴォルテール『ザイール』主人公のスルタン】かオセローかといったところだ。ターバンの耳の上には羽根飾りを立て、金襴の上着からは黒檀の腕が覗いている。白い紋繻子で作られた膝丈の緩やかなキュロット。刺繍入りのベスト(ジレ)の上から色鮮やかな革帯を締め、腰には宝石細工を施した短剣が輝いている。

「おやおや! 今日のゾマールは素晴らしいね!」

 黒ん坊は鏡の前でご満悦だ。

「この子ったら、陛下にお願いがあるそうですの」

 ルイ十五世は飛び切り優雅な微笑みを見せた。「とんでもない願いなのだろうね」

「なぜですの?」

「これ以上はない計らいを既にあなたがなさっているからですよ」

「といいますと?」

「余と同じです」

「わかりませんわ」

「あなたの僕《しもべ》であることです」

 サルチーヌが頭を垂れ、口唇を噛んで笑いを洩らした。

「あら、お上手!」伯爵夫人が王の耳に囁いた。「大好きですわ、フランスちゃん」

 今度はルイが微笑む番だった。

「ところで、あなたが言っていたゾマールの頼みとは何だね?」

「長年のお仕えに対するご褒美です」

「十二歳でしたね」

「末永い将来のお仕えですわ」

「なるほど!」

「ええ陛下、これまではずっと、仕えてくれた人にご褒美をあげていたんだから、これからは仕えてくれる人にご褒美をあげてもいいんじゃないかと思いますの。そうすれば、今まで以上に忠誠を誓ってくれると思いますし」

「それは面白い! サルチーヌ殿はどうお思いかな?」

「忠実な者たちには何よりの贈り物かと。私は賛同いたします」

「ところで伯爵夫人、ゾマールのための頼みとは?」

「ルーヴシエンヌ(Luciennes)の城館がありますでしょう?」

「つまり話を聞いたことがあるか、ということですね」

「陛下が悪いんですのよ。来て下さるよう百回もお誘いしたのに」

「規則はご存じでしょう。旅先ででもない限り、余は王宮以外の場所で寝むわけにはいかない」

「お願いというのがそれなんですの。王宮にルーヴシエンヌを建てて、ゾマールを長官にしましょう」

「とんだ喜劇ですね」

「だって大好きなんですもの」

「ほかの長官たちが喚き出しますよ」

「させておけばいいわ!」

「だが今回はちゃんとした理由がある」

「よかったじゃありませんか。しょっちゅう空泣きしてたんですから! ゾマール、跪いて陛下にご挨拶なさい」

「何のために?」ルイ十五世がたずねた。

 黒ん坊が跪いた。

「陛下がご褒美を下さるからです。あたしの服の裾を持って、宮廷の頑固者たちや淑女たちを悔しがらせてくれたことに対する」

「だが醜い」そう言ってルイ十五世は大笑いした。

「立ちなさい、ゾマール。任命されました」

「だが伯爵夫人……」

『ジョゼフ・バルサモ』23-8

「脅しはご勘辨下さい」サルチーヌは半ば朦朧としていた。「謁見式はご想像以上に難しいことになっておりまして」

「『なっている』とはよく言うわね。誰かが妨害しているんでしょう」

「残念なことです!」

「防ぐことは出来ない?」

「私には部下がおります。百人ばかり必要になりますが」

「そうしましょう」

「それには百万ほど……」

「それはテレーの問題ね」【※アベ・テレーは財務総監】

「国王陛下のお許しが……」

「貰っておくわ」

「お許しにはならないでしょう」

「手に入れるってば」

「それでは万事整ったとしましょう。ですがまだ代母の問題があります」

「探しているところ」

「無駄足に終わりましょう。反対勢力がございますから」

「ヴェルサイユに?」

「ええ、ご婦人方はお断わりになりました。ショワズール殿、グラモン夫人、王太子妃殿下、淑女ぶりっこたち(le parti prude)にくみしたのです」

「グラモン夫人がいるのじゃあ、le parti prudeも改名しなくちゃね。こっちはもう王手をかけてるの」

「意地を張るのはおやめ下さい」

「終点に手が届いてるのよ」

「ああ、それで妹さんをヴェルダンに行かせたんですね?」

「当たり! ふうん、知ってたんだ?」伯爵夫人は不満そうだった。

「警察を持っているのはあなただけじゃありませんからね」サルチーヌが笑みを見せた。

「じゃあ密偵が?」

「密偵がおります」

「あたしのところに?」

「あなたのところに」

「厩舎に? それとも台所?」

「控えの間にも、応接室にも、閨房にも、寝室にも、枕の下にも」

「あらあら! 協定の最初の印に、密偵の名前を教えて頂戴」

「しかしご友人と仲違いさせるのは忍びないので」

「じゃあ戦争ね」

「戦争ですって! 物騒なお言葉ですな」

「思った通りに言ったまでよ。出てって頂戴、顔も見たくないわ」

「しかしこれについてはおわかりでしょう。秘密を……国家の秘密を洩らしてもかまわぬのですか?」

「閨房の秘密、でしょう」

「意味するところは同じです、昨今では」

「密偵を知りたいの」

「どうなさるおつもりですか?」

「追い払います」

「では家を空っぽになさいませ」

「恐ろしいことを仰るのね」

「それが事実ですから。いやはやまったく! 密偵なくしては政治もままなりません。やり手のあなたならおわかりでしょう」

 デュ・バリー夫人は漆のテーブルに肘を突いた。

「もっともね。その話は止しましょう。協定の条件は?」

「お任せします。勝ったのはあなたですから」

「あたしはセミラミス(Sémiramis)並みに懐が深いの。そちらの希望は?」

「小麦に関する請願を陛下に上申するのはおやめください。善処すると既に約束してしまったとは思いますが」

「いいわ。その件に関する請願書は全部持って行って。この箱の中」

「代わりにこちらをお受け取り下さい。謁見式と座席についての報告書でございます」

「これをあなたからだと言って陛下にお渡しすれば……」

「その通りです」

「あなたからだというふりをするのね?」

「はい」

「いいわ。でもあなたはどうするの?」

「お渡ししたと公言いたします。時間を稼ぐことが出来ましょうし、賢明なあなたならその時間を無駄にはなさらぬでしょう」

 とその時、両扉が開いて取次が現れた。

「国王陛下です!」

 二人は協定の印を急いで隠すと、振り向いてルイ十五世陛下に敬礼した。

『ジョゼフ・バルサモ』23-7

「あたしのところの悪ガキちゃんたちに、学校の作文みたいに叙述、解釈、敷衍をさせてたんですけど、今朝になって諷刺詩、戯れ歌、喜劇が届きましたの」

「まさかそんな!」

「三つとも上出来。今朝は陛下に楽しんでもらえそう。新しい主の祈りも一緒にね。あなたが広めたんでしょ?

『ヴェルサイユにまします我らが父よ、御名を蔑ませたまえ。御国を揺るがせたまえ、御心の天に成る如くには地に成させたまうな。汝の寵姫が奪いし我らの日用の糧を返したまえ。汝の益を侵す大臣を我らが赦す如く汝の益を守る高等法院をも赦したまえ。我らをデュ・バリーの試みに遭わせず悪代官より救い出したまえ。アーメン』」

「何処でそんなものを?」サルチーヌが両手を合わせて溜息をついた。

「見つけるつもりなんてなかったわ。出来がよさそうなのを親切にも送ってくれる人がいるのよ。あなたにも同じことをしてあげる」

「しかし……」

「お互い様よ。明日には問題の諷刺詩と戯れ歌と喜劇が届きますからね」

「今すぐではないのですか?」

「だって配る時間がいるじゃない。それに、起こったことを警察が知るのは一番最後って決まってるでしょ? きっと楽しんでいただけると思うわ。あたしなんか今朝から四十五分間、笑いっぱなし。陛下はお腹の具合が悪いそうよ。それで、まだいらっしゃらないの」

「もう駄目だ!」サルチーヌ氏は両手で鬘を掻きむしった。

「何処が駄目なの? 諷刺歌を作られただけじゃない。あたしは『ラ・ベル・ブルボネーズ』で駄目になった? まさか。口惜しかっただけ。今度はあたしが他人を悔しがらせる番よ。ほらいい詩でしょ! あんまり嬉しいものだから、毒虫ちゃんたちには白ワインをご馳走しておいたの。きっと今ごろはぐでんぐでんに酔いつぶれてるわ」

「どうか、伯爵夫人!」

「まずは諷刺詩を読んであげるわね」

「お願いですから!」

仏蘭西も山の天気も覚束なし天つ心ぞ女たりける……。あら間違っちゃった、これはあたしのことね。こんなにあるとごちゃごちゃになって。待ってね、これだわ――

 人や知る 色も匂へる錦絵を――。形もまろき香水壜。ボワイヌ、テレー、モープーの。色も名もあるその中に。合はせて混ぜしサルチーヌ。立てる匂ひに鼻つまみ。金に腐りし四天王なり!」

「どうかもうご勘辨を」

「今度は戯れ歌にしましょう。これはグラモン夫人の歌。

 お巡りさん、この肌を見てよ、綺麗でしょ? お仕事ちょうだい。王様に教えてあげるの……

「マダム!」サルチーヌの声には怒りが滲んでいた。

「怒んないで。まだ一万部しか刷ってないんだから。そんなことより、この喜劇だけは絶対に聞くべきよ――」

「では印刷したのですか?」

「愚問ね! ショワズールさんはそうしたんじゃないの?」

「印刷工には覚悟がおありなのでしょうな!」

「あら、やってご覧なさい。許可証はあたしの名前で出してるの」

「何ですって! では陛下もこの悪ふざけを笑っておいでなのですか?」

「何言ってるの! あたしの指が動かない時に詩を作っているのは陛下よ」

「尽くしたお返しがこれですか?」

「裏切ったのはあなたでしょ。公爵夫人はショワズール家の人間。あたしを失脚させたがってるんだから」

「お聞き下さい。あのかたの方で私を捕まえたのです」

「じゃあ白状する?」

「やむを得ません」

「何故黙ってたの?」

「お伝えに来たところだったのです」

「嘘おっしゃい」

「誓って本当のことです!」

「賭けましょうか?」

「どうかお許し下さい」サルチーヌが跪いた。

「いいじゃないの」

「どうか休戦を、伯爵夫人」

「そんなに中傷詩が怖い? 殿方であり大臣でもあるあなたが?」

「それだけなら怖くありませんとも」

「戯れ歌一つであたしが――女のあたしがどれだけ辛い思いをしているのか、少しも考えたことがないんでしょう?」

「あなたは女王です」

「ええ、未承認のね」

「決して悪いようにはいたしません」

「でしょうね。でも何かしたりもしないじゃない」

「出来る限りのことはいたします」

「そう、信じておくわ」

「信じて下さい」

「取りあえず今は悪いことよりも良いことの方を考えましょう」

「喜んで。絶対にしくじりません」

「あなたはあたしの味方よね、ウイ? ノン?」

「ウイ」

「謁見式が無事に終わるまで協力してくれるのね?」

「あなたご自身も対策を立ててらっしゃるのですね」

「印刷所の方は、昼でも夜でも準備万端。三文文士たちも四六時中お腹を空かせてますから。飢えてさえいれば必ず噛みついてくれるでしょ」

「最善を尽くしましょう。お望みは?」

「何も。ただ無事に終わることを願うだけ」

「無論、私としては全力でそう努めます!」

「やめてよ」伯爵夫人は足を踏み鳴らした。「そんなのでたらめの……口先だけじゃない」

「伯爵夫人……!」

「そうよ、あたし認めない。この場限りの言い逃れなんでしょ。どうせあなたは何もしない。でもショワズールは動きを見せるわ。そんなの嫌、わかる? すべてか無か。ショワズール一味を縛り上げて牙を抜いて破滅させて見せてよ。でなきゃあなたの力を奪って縛り上げて破滅させてあげる。いいこと、あたしの武器は戯れ歌だけじゃない、覚えておいて」

PROFILE

東 照《あずま・てる》(wilderたむ改め)
  • 名前:東 照《あずま・てる》(wilderたむ改め)
  • 本好きが高じて翻訳小説サイトを作る。
  • 翻訳が高じて仏和辞典Webサイトを作る。

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