「おたんじょうびおめでとうございます、ミセス・フリン!」
ママはうれしさのあまり息を呑んだ。「まずはあんたが飲んで!」
「お気持ちはありがたいのですが」ジョニーが答えた。「おたんじょうびおめでとうございます!」
祝杯があげられたとき、パモウナとジョニーは思いきり顔を見合わせた。
「もういい?」パモウナがたずねた。
「うん」ジョニーはうなずいた。「ママ、こっち。にわにきて。びっくりするから!」
子供たちについて薄暗い囲いまで行くと、幸運にもここぞとばかりに太陽が輝いた。見よ、手強いdauntless灌木の葉はむしられ、実のならぬ小枝には子供たちが白・赤・黒のいくつものさくらんぼをつるしていた。
「ママ、どう?」子供たちは叫ぶとさくらんぼをいくつかもいで母の手に押しつけた。「ねえどう?」
「とてもすてき!」哀れな母は声を震わせて答えた。二人は何も言わず見つめていた。母はとうとう耐えきれず振り向いて、台所で泣きに行った。
The Cherry Tree, by A. E. Coppard, 1922
これにてコッパード「さくらんぼの木」はお終いです。次はナルスジャックのブラウン神父贋作か、コッパードの別の作品を訳したいと思います。
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