翻訳連載ブログ
 「ロングマール翻訳書房」より、翻訳連載blog

「幽霊の犯罪」その15 トーマ・ナルスジャック

「そうでしょうか」神父が小さくもらした。「わたしにはむしろ、柄が燃やされた短刀のように見えますが。燃やされたために、柄が刃と同じくらい薄くなったのでは」

 ディアドラ卿の頬が怒りに震えた。蝙蝠の装丁がなされた赤い革表紙の本を手に取ると、ブラウン神父の鼻先に振りかざした。

「ヴァン・エルモントも同じ現象を体験しているのだ。それにナイフの柄が黒こげになっただけではない、強い硫黄の匂いも広がっていたではないか!」

 フランボウがあわてて話題を変えた。

「ジョン・フリンはあなたの目の前だったし、ぼくも目を離さなかったから、疑うわけにはいきませんね。ナイフを投げるのは無理だ。オリヴァー卿はミス・ハリカンの方に寄っていたし、両手はテーブルの上だった」

「明らかではないか」卿が決めつけた。「この犯罪を行い得る人間はいない……」

「考えてみたのですよ」そのとき神父が無邪気な声で口を開いた。「なぜわれわれをベヴァリッジ・ヒルから追い出したがっていたのか。ロード・コールズウェルの亡霊が口にした理由は一五五二年であればなにがしかの意味があるでしょうが、現在では……」

 オリヴァー卿がぷっと吹き出し反論した。

「あんたがたカトリックの坊さんたちは、別世界の謎をあまりよく知らないようですな。情念は涸れるどころか、降霊を重ねるうちに霊的成長を遂げるのだ。これで唐突な配置換えを説明できる……」

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 もうすぐクライマックス。これが終わったら、お金があればハートリイの短篇集とシャーロット・アームストロングの未訳作を購入したい。駄目ならふたたびコッパード。スポーツドリンクの美味しい季節になりました。

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東 照《あずま・てる》(wilderたむ改め)
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