翻訳連載ブログ
 「ロングマール翻訳書房」より、翻訳連載blog

「さあこい、マクダフ」03-01 シャーロット・アームストロング

第三章

 ライナ伯母さんが帰ってきてから(の夜は)、時間が意味を持ち始めた(時間が大きな意味を持つようになる)。一人一人がその時間に何をしていたか(ということだ)。これからは、あとで計算(推定)した数字に従って成り行き通りに時間を書き記すことにする。

 伯母さんが来たのは十二時五分前だった。

 まっすぐわたしのところにやってくると明るく声をかけてくれた。

「エリザベスね? ライナ・カスカートよ」

 ソファの上で手を握って身体を引き寄せると、「ちゃんと来れてよかった。ベティとお呼びすればいい?」と言った。

「家の方ではベッシーと呼ばれてました」

「ベッシーね」と言って小首を傾げた。「いい名前。ベッシーと呼ばせてもらうわ、わたしのことはライナと呼んで。お部屋は気に入った? 夕食はいただいた?」

「いえ……お腹がすいてないので」とは言ったものの、わたしはライナのことが気に入った。ちゃんとした感覚の持ち主だ。実家では、なによりもまずお客さんには食事を出していた。

 みんながまわりに集まってきた。ライナの影響力は、面白いというより少し恐ろしかった。ガイ・マクソンはソファの後ろに陣取って、ライナの頭を偉そうに見下ろしていた。僧正《ウィンベリー》は暖炉に背中を向けて暖まりながら流し目をくれていた。ほんとうにそうしていたのだ。それが父親らしいとでも思っているのか、なだめるような声でライナに話しかけていたが、そのあいだじゅう目は何かを見つけようとせわしなく動き回っていた。ガスケル氏は葉巻に火をつけたきり、ライナから視線を逸らそうとしないどころか瞬きすらしなかったが、そのあいだも口の方は蛙みたいにぱくぱくやっていた。

 なのにチャールズ伯父さんは椅子に座って小さくなった火を見ているだけだった。何も言わず。誰からも遠く離れたところにいるみたいだった。ヒューはいつの間にか部屋の隅から雑誌越しにちらちら覗いていたみたいだったのだけれど、今は雑誌の上から目を出してじっと伯父を見つめていた。伯父はすねているのだろうか、うんざりしているのだろうか、それとも怒りのあまり不作法な態度を取っているのだろうか? わたしにはわからない。

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東 照《あずま・てる》(wilderたむ改め)
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