翻訳連載ブログ
 「ロングマール翻訳書房」より、翻訳連載blog

バルサモ訂正つづき

第50章

「内陣の柵を仕切っている緑の布の間です。もっとも、仕切っているのは形だけのことでしたが。身廊と内陣の境目には充分な空間がありましたから。/地上に与えられたとでも言うべきその空間から、額ずいた人々の中にただ一人立ったままでいる人間が見えました。」
 ↓
「内陣の柵を閉ざしている緑の布の間です。もっとも、閉ざしていると言っても形だけのことでしたから、身廊を確認するには充分な隙間がありました。/世俗とのつながりとも言うべきその隙間から、額ずいた人々の中にただ一人立ったままでいる人間が見えました。」


「ヴェールをかぶった」→「外套を纏った」


「誠実であろうとする魂にとって、不思議な穏やかさと、想像を絶するほどの責め苦が混じり合った苦しみでした。いつも思いがけずからかうような形を取って現れるのだという思いに囚われて、そんな思いと戦っている最中を選ぶようにして現れる力に、抵抗できないまま圧倒され始めるのでした。」
 ↓
「苦しみ――そうです。不思議な穏やかさが混じってこそいましたが、誠実であろうとする魂にとっては、想像を絶するほどの責め苦でした。常に存在し、いつも思いがけず、からかってでもいるように、抗おうとすればその瞬間に姿を現したり、問答無用の眠りに引き込もうとしたりする――そんな思念や形を取った圧力だったのです。」



第54章

「別館」→「城館」



第55章

「一つか三つはあるのだろうが、誰も知らないし何処にも見えない。」→「或いは幾つかあるのかもしれないが、誰も知らないし何処にも見えない。」



第56章

訳し洩れがあったので追加。「ロレンツァは心『を痛め』、閉じた瞼の下からひっそりと涙を流した。」


「こうやって私がそばにいるとあなたが苦しんでいるのがわかる。私は役にも立たず見捨てられたままですから。汚れのない花が一輪あなたを誘う香りを放っているというのに、その香りを煙たがられるなんて!」
 ↓ 
「私がこうやってあなたのそばで役にも立たずに見捨てられて過ごしていることに我慢がならないんでしょう! 汚れのない一輪の花が香りを放って誘っているというのに、その香りをはねつけるなんて!」


第60章

「内閣そのものが哲学者なのです」→「大臣自身が哲学者なのです」

「この内閣の内から支配しておるのだな。」→「その大臣の人格に潜り込んで支配しておるのだな。」

「静脈」→「血管」。これも初歩的なミス。


第63章

サルチーヌがジャンに対し「vous autres bourgeois.」と言う場面。貴族であるジャンに「あなた方ブルジョワ」ではおかしいので、「あなた方のような一般人」に変更。



第64章

「それが陛下、回廊の中に光があるとご想像下さい。それが少なくとも十五分ほど動き回っておりました」 → 「どうか陛下、回廊の光をご覧下さいまし。光は十五分ほど前から動き回っていらっしゃいます」

「C'est le petit-fils d'un grand-père !」。この場面では文脈から考えて、「孫」「祖父」ではなく、「小さな息子」「大きな父親」と捉えるべきか。

「いいぞ! 光は消えた」国王はしばらく窓ガラスを見つめていた。「余の場合も二十分与えられていたが、余は確か五分後には妻のところに行っておった。ラシーヌの息子は『やはり祖父の孫』と評されたが、王太子もそう評されるべきだ」
 ↓
「よし、よし! 光が見えぬ」国王はしばらく窓ガラスをじっと見つめてから言った。「余も同じように二十分もらっていたが、確か五分後には妻のところに行っておったはずだ。どうやら王太子も第二のラシーヌと同じく、『偉大な父の卑小な息子』と言われることになりそうだ」


第68章

「苦しんでいる人たちを立たせておいてでも貴族を死の床に横たえておくとしたら、私にとって女神にも等しい思いやりの気持に正真正銘従うことになるだろうがね。」
 ↓
「苦しんでいる人たちを起き上がらせるために貴族を死の床に放っておくことが、神にも等しい思いやりという掟に従うことになる。」

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東 照《あずま・てる》(wilderたむ改め)
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