翻訳連載ブログ
 「ロングマール翻訳書房」より、翻訳連載blog

『アンジュ・ピトゥ』 47-2

アレクサンドル・デュマ『アンジュ・ピトゥ』 翻訳中 → 初めから読む

 若者たちは互いに見分けがつくように制服を決め、危険を察知したか未来を読んだかしてヴェルサイユに引き寄せられた役なしの将校たちやサン=ルイ勲章の受勲者たちと合流し、そこからパリに広がって行った。呆気に取られて目を瞠られるほどに、この新たな敵たちは若々しく傲慢で、守る気のない秘密に胸をふくらませていた。

 この直後なら国王も抜け出すことが出来ただろう。味方に守られて移動し、まだ何も知らず準備不足のパリからも見逃されていたことだろう。

 だがオーストリア女を守護する魔神は目を開いて見ていた。

 リエージュが皇帝に反旗を翻したため、その対応に追われたオーストリアはフランス王妃のことに心を砕いている暇がなかった。

 もっとも王妃はこうした場合には慎重な行動を取るべきだと考えていた。

 だがその時には弾みのついていた事態は怒濤のような勢いで動き続けていた。

 フランドル聯隊が喝采で迎えられたので、親衛隊もフランドル聯隊の将校を晩餐に招待する決定を下した。

 歓迎会は十月一日に決まった。街中の名士が招待された。

 何が問題だというのか? フランドルの兵士たちと交流を図ることが? 地区と州が交流を図っていたのに、兵士たちが互いに一切の交流を図ってはならない理由があろうか?

 殿方が交流を持つことが憲法で禁止されていたとでもいうのか?

 国王は今でも聯隊の主人であり、国王だけが命令を出すことが出来た。ヴェルサイユ宮殿(son château de Versailles)の所有者は国王だけであった。国王に相応しいと思える者を宮殿に招き入れる権利を持っているのも国王だけであった。

 ドゥエー(Douai)でおとなしくしていた勇敢な兵士にして立派な殿方を宮殿に招き入れない理由があろうか?

 おかしなところは何もない。誰一人として驚くべきことだとは考えていなかったし、ましてや不安に感じるべきことだとはさらさら考えてはいなかった。

 同じ席で晩餐を摂ることで、自由と王権を守らねばならないフランスの軍隊に必要な愛情を互いに固め合うことになるはずだった。

 もっとも、国王は決められたことを知らされていただけかもしれない。

 暴動があって以来、言い分を聞いて退いた国王は、もう何にも患わされることはなかった。仕事という重荷は取り払われた。代わりに統治してくれるのだから、また改めて統治しようとは思わなかったが、それで一日じゅう退屈になってしまうと言い張るつもりもなかった。

 国民議会の面々が好きなように剪定をおこなっている間、国王は狩りをしていた。

 貴族や司教の面々が八月四日に鳩小屋や封建的特権、鳩や文書を放棄していた間、国王も同じように犠牲を厭わず狩猟権を廃止したものの、だからといって狩りをやめたりはしていなかった。

 斯くしてフランドル聯隊の兵士たちが親衛隊と晩餐を摂っている間、国王はいつもと同じく狩りをおこなっていたので、戻る頃には食事も下げられてしまうはずだった。

 それでは国王も困るので、宮殿(le château)で祝宴を開くよう王妃に頼んでおくことにした。

 王妃にはフランドル聯隊を歓待しない理由など見当たらなかった。

 王妃は劇場の使用を認め、その日のために床を張らせて、兵士や招待客が入れるだけの広さを確保した。

 いやしくも王妃たる者がフランスの貴族をもてなすのだから手は抜けない。

 これで会食場は用意できたが、応接室が足りないので、ヘラクレスの間を使わせることにした。

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